DX化は企業のみならず行政においても必要なものであり、人口問題や環境保全など様々な地域課題を解決に導くための武器として注目されています。県内でもとくに積極的にIT活用を進めている南城市にその取り組みについて、南城市企画部まちづくり推進課 文化振興・離島振興・統計係 喜瀬斗志也主査にお聞きしました。
南城市は平成18年に佐敷町、知念村、玉城村、大里村が合併して誕生した比較的新しい市です。
市の東側は太平洋、中城湾に面し、おきなわワールドなど観光施設も有します。斎場御嶽が世界遺産に登録されて以降は観光客もさらに増え、令和元年度には36万人がおとずれています。新型コロナウイルスの影響を受けて現在は減少してはいますが、県外、海外から多くの観光客の支持を受けています。
しかし、その一方で、人口の偏りが大きな問題となっています。
南城市の人口は全体として微増傾向にあるものの、地域バランスを見ると、比較的那覇市に近い西側で増加し、那覇から遠い東側では少子高齢化が進んでいます。
また、15~64歳の生産年齢層は大幅に減少し、少子高齢化が深刻化しています。
利便性の高い西側の一部の地域では商圏が形成され、スーパーなどが立地する一方、市の東側地域は店舗が極端に少なく、2021年7月には知念唯一のスーパーが閉店。今後もさらに商圏は小さくなることが予想されます。買い物をする場所が近くにない住民は、毎日の生活に不便を強いられることになってしまいます。
このように地域格差が広がる中、テクノロジーによって格差を埋めることができるのではないかと考え、南城市では数年前から民間企業と連携しながらDX化を検討してきました。
たとえば、近所にスーパーなどがない住民のため、市内のスーパー等からドローンで生活必需品を運ぶ、オンラインで簡単にネットショッピングを可能にするなどといったシステムがあれば、地域住民の生活格差が解消されます。
どのようなルートで届けるのかのアルゴリズムや高齢の方にもシステムを活用していただける仕組みをどのように構築するかが課題ですね。
また、医療面での格差も解消する必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大により、医療体制が逼迫しており、定期健診や薬の購入に出かけることにリスクを感じるお年寄りも増えています。体調が悪いときにオンライン診断が可能になれば、高齢の方や持病を持つ方も安心できます。もちろん、対面でしかできない治療もありますが、オンラインでどこまでのことができるか、期待しています。
オンラインを活用した交流も重要です。新型コロナウイルスの影響により、大人数で集まることが難しい中でも、オンラインで人とつながり、趣味などを通じて交流を持つことで見守ることができ、生きがいを得ることもできます。テクノロジーをどのように生活に活かしていくべきか、考える段階にきています。
高齢の方だけでなく、子供たちへの教育、投資という意味でも、テクノロジーの力は不可欠です。南城市には大きな産業が少なく、財政的にも厳しい状況にあり、若年層が離れていってしまう傾向にあります。それを防ぐためにも、地域でキャリア形成ができる土台を作ることが急務です。
移住した「定住人口」でも、観光にきた「交流人口」でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを「関係人口」といいます。地域によっては若者を中心に変化を生み出す人材が地域づくりの担い手となることで発展している場所もあります。
テクノロジーを活用することで、地域が主体となって行う観光プログラムを作り、拡げていくことが可能になると期待しています。
そのほか、伝統文化の担い手の育成、インバウンド需要拡大、ワーケーション施設の運営など、地域の課題を解決し、さらに南城市ならではの魅力を構築、プロモーションしていくために、テクノロジーが大きく役立ってくれるものと考えています。
南城市では市全体の取り組みとして、民間企業とも協力しながら、ワーケーション施設の誘致やIT事業者を含めた地域課題解決のためのアイディアソン・ハッカソンなどを積極的に実施。今後も最新のテクノロジーを駆使しながら、よりよい生活と未来につながるまちづくりのために力を尽くしていくつもりです。